一日一ポンコツ

サブカルオタクで創作クラスタなちょっと腐女子の雑記ブログ

サマータイムレンダが読み始めたら止まらない

こんにちゃぁ、しぐのです。私は最近ジャンプ+のアプリを愛用しておりまして、トップのページをぱらぱら〜〜っと眺めては新しい漫画との出会いを常に探しているのですが、その中でずっと気になってた『サマータイムレンダ』。

気になってたし、ちょっと読んでみよ〜と軽い気持ちで1話を読みだしたら…

もう止まらん止まらん。

とにかく続きが気になってアプリが閉じれない。最新話まで一気読みしてしまいました。紙でもう一回読みたい。

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サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

〈あらすじ※ネタばれ注意※

ストーリーは主人公が幼馴染の訃報を受け、故郷の離島に里帰りするところから。幼馴染の潮は表向き事故死ということだったが、誰かに殺された可能性が。潮は海で溺れた女の子を助けて、自らの命を落としていた。助けた女の子は葬儀の翌日、一家全員で失踪。

島には「影の病」という怪談話が古くから伝わっており、自分とそっくりの人間(影)が現れ、それを見たものは死ぬという。

主人公は影に早々に殺されるが、次の瞬間、島に降り立つ前へと時間が巻き戻る。同じ時間を繰り返す中でどんどん影の謎に迫っていくというSFミステリー。

ドッペルゲンガーとタイムループ。いくつものジャンルの要素が交錯してて、ジャンル分けが難しいですが、大枠はループものに分類されるのかな。

ループものといえば『時をかける少女』『僕だけがいない街』なんかが代表的ですが、どれも同じ時間軸を何度も行ったり来たりして「不都合な事実」「受け入れられない現実」を回避しようと試行錯誤しながら物語が進むという構造。ミステリー要素が強く、『時かけ』よりだいぶ『僕だけがいない街』を彷彿とさせますね。

1話目の時点で、その全てが伏線。テンポが良く畳み掛けるようにストーリーが展開していって、全く読む手を休ませない。スピード感が優秀。

ミステリーって、バラバラだった謎が1つに繋がっていく瞬間が一番醍醐味だと思うんですけど、この作品はしっかりその醍醐味を味わわせてくれる。パズルがどんどん噛み合っていく快感。破綻も蛇足もない上質なミステリーに出会ったときって、ほんとに至高の喜び。

どんな作品でもフラグには敏感だが、殊にミステリーは、どこが伏線になるのか探しながら読むのが楽しい。「これは後々絶対どっかに繋がってくるぞ」と予想しながら伏線の小石を拾う。どんだけ小さいフラグをキャッチしながら読めるか、みたいな。

そして後々、その拾った小石が予想通り回収された時の「よっしゃぁぁぁやっぱりな!!!なんかあると思ってたぜぇぇぇ」っていう快感と、逆に「そんなとこにも伏線があったのか見逃したぁぁぁ」っていう発見の繰り返しで、その見逃し、自分が拾えなかったフラグが多ければ多いほど、その作品は自分の中で「面白い!!」ってなる。

サマータイムレンダもまさにそんな感じで、最新話まで読んでまた1話を読み返すと、「あ、こんなとこにも伏線があったのか」とその緻密さにトキメキが止まらない。

 

ミステリーの完成度も面白さの1つなんですけど、それだけなら小説でも別にいいんですよね。

この作品が漫画として優れてるのは、この物語全体に漂う不気味さの演出、影と戦うシーンでのバトルの迫力、多彩なキャラクターの魅力、それらをすべてカバーする画力の高さだと思うんです。自分の好みの絵柄ってのもありますけど。

たまたまコメント欄に目を通してると、作者の田中靖規先生は、ジョジョの荒木飛呂彦先生のアシスタントだったと…!画力高いはずだよ!!!系譜が脈々と受け継がれて、名作が名作を生む、その連綿とした流れの発見も、思いがけない喜びの一つでした。

 

ミステリーと同じくらいの割合でホラーの要素も多分に含んでいます。

そもそもドッペルゲンガーってのがホラー要素。隣人がいつのまにか別人に入れ替わるという不気味さ。

それに加えて、島という物理的にも他と隔たれた田舎特有の閉鎖性。ホラーゲームの『SIREN』を思い出します。舞台の日都ヶ島は、和歌山の実際に存在する離島、友ヶ島がモデルになってるようです。旧日本軍の砲台跡とか実際にあるらしい。

そして、島に伝わるヒルコ神の信仰。ヒルコ(蛭子)は日本神話に登場するイザナギとイザナミの最初の子供で、異形であったために生まれてすぐ海に流されてしまうという可哀想な神様なんですよ。異形のために親に愛されなかった神、それを崇める島の信仰。そんな暗い設定が下敷きになっているということを知って読むと、不気味さがじわじわ効いてくる。

しかし「廃病院」「大戦時代の日本軍が使っていた地下通路」など、それが出てきただけで身構えてしまうようなお決まりな舞台設定は登場しますが、あくまでもダンジョン的な、敵のアジト的な位置付けになっていてホラーに振り切りすぎないバランス感覚は素晴らしい。(怖いの苦手だからこれくらいのバランスが私にとってはちょうどいいです)

 

〈※以下、ネタバレ注意※〉

キャラクターの人間性も話が進むにつれ深掘りされて、どんどん魅力を増していくように思います。特に人間性の描写に痺れたのが、根津と菱形の影になってしまった妻に対する姿勢を描いたシーン。

影になった妻を殺せず拘束したままずっと生かしていた根津。病気で生きられなかった妻を影にしてでも離れられなかった菱形青銅。それぞれの姿が対比的で鮮やかだなぁと。この正反対の2人の男には根底に流れる深い愛が見て取れます。何者をも犠牲にしてでも妻と共に生きようとした菱形。その過ちと弱さを描くことで、逆説的にその愛の深さを読者に訴えた。かとおもえば、自分自身で妻の影を葬ることでケジメをつけた根津の葛藤と決意を描くことで、菱形とは別の形で愛情を表現してみせています。影に人生を翻弄された不器用な2人の男の精一杯の愛情…なんて愛おしいんだろう。まさかここで涙するとは。

おっさん…あかんよ…愛おしいよ…主役差し置いてこの2人についてそんなに語るのはどうかと思うけれども、そんだけ脇役にも一人一人人間ドラマがちゃんと設定してあって、キャラクターが作りこまれてて、愛を感じます。キャラの意外な一面が見えるたびに、リアルな人間らしさが増していくようで、変化していくキャラクターの人間性という見所も、この作品の魅力ですね。

 

ミステリー好きなら絶対楽しめる作品です!ジャンプ+なら無料で読めちゃうので是非…!是非…!

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